村尾政樹の個人ブログ

ソーシャルセクターに勤める29歳の個人ブログ。仕事や活動の記録がメインです。

【御礼】ブレイクスルー 自分たちの声で社会を変える

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2017年1月23日、NHK教育テレビEテレ)のハートネットTVで『ブレイクスルー File.68 自分たちの声で社会を変える』が放送されました。多くの人にご覧いただき、放送後にはコメントやメッセージも多方面からいただき、本当にありがとうございます。

 11歳で母を亡くし、ひとりで生き抜く『強さ』を追い続けた若者は、自分の『弱さ』を得ることで自分の人生を諦めずに済みました。受け止めてくれる人の存在とその経験が、人の悩みや歩幅に寄り添う活動の大きな力となっています。母の死から15年、今まで寄り添ってくれた方々に改めて心から感謝しています。

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番組では多くの学生や若者たちも登場します。見どころはたくさんありますが、最後のシーンもお気に入りです。どのような環境で生まれ育っても、子どもたちが自分の選択で自分たちの人生と社会を歩むことができる。これって、シンプルに素敵なことだと思いませんか?

それを可能にするかは子ども本人の努力だけでなく、何より私たち社会が変わっていく必要があります。だから、彼らは自分たちの声をあげてくれている。この声は私たち社会の大切にすべき想いで、声を聴いた一人ひとりにボールは投げられています。この放送が一人ひとりできることを始める、または更に進めるきっかけにもなれば幸いです。

再放送は、1月30日(月)13時05分から。見逃された人は、是非ご覧ください。

【全文】子ども食堂は、最高の『隠し味』/村尾政樹「こども食堂サミット2017」リレートーク

2017年1月15日、東京・池袋で開催された「こども食堂サミット2017~こども食堂のつづけ方~」の動画が公開されていたので、お知らせいたします。

素晴らしい登壇者の講演やトークが全て公開されているので、ぜひご覧ください。リンクは一番下に貼り付けてあり、僕はリレートークの33分30秒頃に登壇します。

また、今後の『伝える。』を磨く勉強も兼ねて、ご参考までに僕のリレートークを書き起こしました。あわせてご一読いただければ幸いです。

 

子ども食堂は、 最高の『隠し味』

みなさん、こんにちは。子どもの貧困対策を推進する公益財団に勤めている『あすのば』事務局長の村尾と申します。よろしくお願いいたします。

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突然ですが、これは、僕がつくったカレーです。みなさん、カレーに何か隠し味を入れますか?調べてみると、りんご、はちみつ、ソース、チョコレート…。これ以外に何か入れたりすることはありますか?ヨーグルトもありましたね。色々とあるみたいですけど、僕がつくったこのカレーには、インスタントコーヒーを入れています。最後に少しだけインスタントコーヒーを入れると、お家でつくったカレーではなく、ちょっと、お店でつくったような深みが出るんですね。ぜひ、『子ども食堂を続ける』というテーマなので、今度カレーをつくるときにインスタントコーヒーを入れてみてもらえると、ちょっと違う味になるかなぁと思います(笑)

 

…なぜ隠し味の話をしたかというと、ずっと思ってることがあって、子ども食堂の取り組みは、子どもたちの人生にとって最高の隠し味だなぁって思っています。

 

栗林さんは、よく『おせっかいおばさん』と紹介されていて、僕も、栗林さんの世代くらいだとその『おせっかい』を受けてきた子どもの世代かもしれません。そこで、僕は自分のことを『おせっかえしお兄さん』と命名しました(笑)

 

最初は、栗林さんがWAKUWAKUネットワークで言っている『おせっかえる』みたいに『カエル、おせっかえるのお兄さんです』と言おうとしましたが、まだまだカエルではない、未熟な『おたまじゃくし』の部分もたくさんあるので…。ただ、今、『おせっかい』を返そうとしているお兄さん、という立場です。

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僕も『孤立』しそうな子どもだった

少しだけ、僕の話をさせてください。僕は、おせっかいを受けて育ってきた経験があります。僕は、小学校6年生のときに、お母さんを自殺で亡くしました。お母さんが亡くなって、父子家庭で育ちました。

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経済的な意味では、子どもの貧困対策を推進する財団法人に勤めていて、厳しいお母さん方の現状を常に聴いているので、相対的な面では少しまだゆとりがあったのかもしれない。けれど、お母さんが亡くなってから、お父さんも仕事をしていて、しばらく定時で仕事を終えて帰ろうとするんですけど、民間の企業に勤める会社員でしたので、そういう訳にもずっといかないとなりました。

 

お母さんが亡くなって、数カ月経ったときくらいですかね。お父さんから僕も含めて姉と弟3人に「自分の生活は自分でやってね。それが基本です。」と告げられました。僕のお父さんは朝の4時半とか5時くらいには起きて、僕が起きる前に仕事へ行って、僕が寝る前、もしくは寝てからかな、仕事から帰ってくる。そういう生活でした。だったので、実はお母さんが亡くなってからは家で親や大人と一緒に暮らした経験がほとんどありません。弟にいたっては5つ下なので、当時は僕が11歳でしたから、6歳でした。姉は2つ上で、中学生でした。

 

僕が、その経験をして、そして、あすのばで高校生や大学生世代の同じような経験をした若者たちから話を聴いたり、子どもやお母さん、お父さんにも直接お話をうかがっていく中で、思う事があります。

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『誰かに頼ってはいけない』、『強く生きねばならん』、『弱いところも見せちゃいけない』と。周りも言うんですね、「お母さん亡くなってるのに、えらいね。」と。「しっかりしてるね。」と。しっかりしてない時があると、「辛いことがあっても、頑張らないかんやろ。」と言います。

 

僕は関西、神戸出身なんですけど、そういう風に声をかけてくれることがありました。その方々も悪気があって言ってる訳ではないことは、分かります。ただ、そう言われて『ああ、頼っちゃいけないんだな。』、『弱みを見せちゃいけないんだな。』、『しっかり生きていかないといけないんだな。』、そう思って育っていくと、よく自立が大事と言われますが、僕は、自立ではなく『孤立』を生み出すと思っています。

 

今、子どもの貧困対策や色んな活動で『子どもが大きくなって自立して…』と言いますが、その望む自立が『孤立』になってしまっていないか。私たちあすのばは、子どもたちの声をしっかり代弁させていただいて、自立が『孤立』になることがないよう防がないといけません。

 

…僕も、とがってましたね。『頼っちゃいけない』、『弱みを見せちゃいけない』、『しっかりせなあかん』と。とがって、孤立しそうになってました。

 

『おせっかえし』の気持ちになれた、三つの出来事

ここで、三つ出来事を紹介します。

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まず一つ目。運動会のときです。小学校6年生、最後の運動会。お母さんが亡くなりました。お弁当など、もちろんありません。その運動会の前日の夜、僕の家のインターホンが鳴りました。

 

友達のお母さんでした。ささっと渡してくれました。運動会のお弁当を。そこで「一つも二つもつくるの一緒だから」と言ってくれました。「あなたのとこ、お母さんがいないから…」ということは、一切言いませんでした。一つも二つも一緒だから、全然気は使わなくても良いからね、と渡してくれました。

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まだあります。二つ目。中学校にあがったときです。僕は、なかなか料理ができなかったので、大体は冷凍食品を電子レンジで一生懸命『チン』をするか、カップラーメンに一生懸命お湯を入れて、3分間、一生懸命待って食べるか、そういった食生活だったんですね。でも、たまに、お弁当屋さんにお弁当を買いに行ってました。

 

そこに、僕のお姉ちゃんの友だちのお母さんがパートで働かれていて、僕は、のり弁を頼みます。渡されていたお金が少なかったので、一番安いやつを頼んでいました。そうすると、そのお姉ちゃんの友だちのお母さんは、こっそりと唐揚げを2個入れてくれるんですね。

 

お姉ちゃんの友だちのお母さんは、何も言いません。『大丈夫だったのかな』と今は思ったりもするんですけど、こっそりと2個、唐揚げを添えてくれるんです。『今日も入れといてあげたからね』というようなアイコンタクトをされて、「ありがとう」と言って、帰って唐揚げを食べるんですね。そこには、唐揚げ以上に受け取っているものがあったのかなと思います。

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最後に、三つ目。これは、栗林さんから「村尾少年の話をしてください」と言われて色々考えました。小学生、中学生、高校生、何かなかったかなと。他にもあったんですけど、これは、その考えていたときに思い出した話です。

 

通っていた高校が地元から電車で通うところだったんですけど、その近くに僕のお父さんの同級生がお好み焼き屋さんをやっていたんですね。『ゆっこ』っていうおばちゃんなんですけど、高校の授業が終わると、僕、そこに行くんです。「いつものお願い」と言うと、おばちゃんはお好み焼きとご飯を出してくれます。食べ終わると、僕は「じゃあ、ツケで」と言って帰ります(笑)

 

お父さんが後で払うシステムにしていたそうです。でも、単に後で払ってくれるからというのではなくて、電話をして予約する必要もなかったですし、そのときに行って、じゃあ、今日はお好み焼きじゃなくて、お好み焼き屋さんじゃ出てこないようなハンバーグとかが出てきたりとか、そういうこともあったんですね。きっと、色々と気を使ってくれていたんだなって、思い返して思います。

 

三つの出来事をお話しましたが、実は、子ども食堂の取り組みも大きな出来事、ビックイベントとしてある訳ではないのかもしれません。僕も、さっきのお好み焼き屋のおばちゃんのこと、こないだ、ふと思い出しました。でも、目立たなくても、小さなそういった支えが、少なくとも僕の場合は、大きな色んな基礎になっています。そういった友達のお母さんとか、おばちゃんとか、近所の人とかがいてくれたから、『おせっかえし』をしよう、そういう気持ちになれているのかなって。

 

「運が良かった」には、絶え間ない『小さな支え』があったから

きっと、みなさん、子ども食堂をされていて、素直になれない子どももいると思います。僕もとがってましたし、ひねくれていた子どもだったので「ありがとう」とか、嬉しいことを「嬉しい」ってなかなか言えなかった。でも、子どもたちのそういった小さな支えを受ける経験の積み重ねが、5年後、10年後、15年後、どういうときに子どもが思い出すか分かりませんが、大きな力になっていることは、日ごろ子どもの声を聴かせていただいて、そして、僕の経験からもお約束させていただきたい。

 

あすのばに関わる若者たちも、よく「人に恵まれてたんだよね」と言います。その、「人に恵まれてきたんだよね」、「運が良かったんだよね」という下地には、こういった子ども食堂、みなさんの絶え間ない『小さな支え』があったからなんだなって、きっと、いつか、その子たちは分かるときがきます。そして、『おせっかえし』、それは次の子どもかもしれない、子ども食堂かもしれない、社会かもしれない、きっと返してくれます。

 

だから、カレーには少しのインスタントコーヒーを

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もう、お時間となりました。あすのばのことは一切紹介できませんでした(笑)

チラシをお配りさせていただいているかと思います。2月に子ども食堂をされている方や、NPOで支援をされている方がより発展的・持続的に活動ができるように2泊3日の合宿研修を開きます。これは、子どもたちの合宿はよくやっていますが、代表の小河も「大人の合宿もせなアカン」と話し、今回初めて開催します。なんと、交通費も大人の方々でも助成金をとれたので補助します。なので、全国各地から、どこからでも参加ができます。

 

また、私たちの財団は、色んな方々のご寄付によって成り立っていますが、その温かいお気持ちを給付金という形でお届けもさせていただきます。先ほどの一つの『おせっかい』ができるツールとして、こういった給付金もやっています。今、ちょうど子どもたちに給付金を届ける受付をやっているので、ぜひ子ども食堂で気になるお子さんがいらっしゃったら、チラシだけでは分からないこともあるかもしれませんが、ひらがなで『あすのば』と検索いただくと一番トップに出てきますので、ぜひ情報を届けていただければと思います。

 

そして、最後に、『全国キャラバン』という事業で全国各地を回っています。『レベルアップ研修会2泊3日も来れないわ~』という、東北地方のみなさん。2月5日に山形で意見交換や支援者同士が集まれる、もしくは市民・県民、東北の方々が集まることのできる機会をつくっています。ぜひぜひ、ご参加いただければと思いますし、周りに山形のお知り合いなどがいらっしゃれば、お声掛けいただければ思います。

 

1月23日、NHK教育テレビEテレの『ハートネットTV』という番組で、先ほど僕が少しお話させていただいたことや、あすのばのことをメインとした特集が放送されます。『ブレイクスルー 自分たちの声で社会を変える』、学生や若者たちの声をぜひ聴いていただければと思います。1月23日、ぜひご覧ください。

 

それでは、短いお時間で『こいつは一体何が言いたかったんや』と思うかもしれませんが、カレーには少しのインスタントコーヒーを入れて欲しいということでした(笑)

ありがとうございました。

 

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