地方の子どもを貧困から救う 神戸の村尾さん支援財団スタッフに
2015/7/4 15:00
貧困に直面する子どもへの支援や政策提言に取り組むため、6月に設立された一般財団法人「あすのば」(東京都港区)の専従スタッフに、神戸市灘区出身の村尾政樹さん(24)が就いた。北海道で働いた経験から「地方の子どもたちは、都市部よりさらに進学などの選択肢が限られる」と実感。「地方の視点」を重視し、貧困対策に取り組む。(磯辺康子)
村尾さんが子ども支援に取り組む背景には、自身の経験がある。神戸で両親、姉、弟と暮らしていた小学6年のとき、母が自殺。精神的な病を抱えていた母に冷たい態度で接したことを後悔し、自責の念に駆られた。
転機になったのは高校1年のとき、奨学金を借りていた民間団体「あしなが育英会」(本部・東京)の集いに参加したことだ。
「親を亡くした高校生がこんなに多いのか」と驚くと同時に、進学を断念せざるを得ない生徒の声が胸に響いた。自らの家庭も経済的余裕がなく、「手に職を付けて就職を」と神戸市立神港高校情報処理科に進んでいたが、大学進学を決意。アルバイトと奨学金で学費や生活費をまかなった。
北海道大在学中、自殺対策に取り組む学生や市民の連携組織をつくり、子どもの貧困をめぐる学習会も開いた。卒業後は道内の社団法人で働いていたが、6月、あしなが育英会・神戸レインボーハウス(神戸市)の元館長小河光治さん(50)らと「あすのば(『明日の場』の意)」を設立。小河さんが代表理事、村尾さんが唯一の専従スタッフとなった。
子どもの6人に1人が貧困状態にあるとされる日本。「あすのば」は、2年前に成立した「子どもの貧困対策推進法」を具体的な政策に結び付ける活動を進める。
「所得の問題だけでなく、子育てや雇用の支援策などを含め、自治体ごとに実態を把握する必要がある」と話す。
過疎地ではボランティア不足などで支援が難しい現実を見てきた。「国の政策は、もっと地方で暮らす子どもの視点に立つべきだ」。実情を社会に示すことが第一歩と考えている。「あすのば」TEL050・3740・2889