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村尾政樹のブログ『伝える。』

ソーシャルセクターに勤める26歳の個人ブログ。仕事や活動の記録がメインです。

大切な人との写真を通じた、自殺対策。予想外の企画に込められた若者たちの想いとは。

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 「ちょっと、まぁくん。お母さん来てるねんから、写真撮ろうや!」

 「ええよ、そんなん…。友達も待っとるし、いつでも撮れるやろ。」

 この会話は、当時11歳の私が地域のお祭りに参加して、近所の人から母親と写真を撮らないかと誘われた時の会話です。一週間後、私の母親は自殺で亡くなりました。

 何で一緒に写真を撮ることを断ってしまったんだろう…。何で母親に冷たく接してしまったんだろう…。私には、母親と一緒に写った写真が幼い頃のものしかありません。母親と最期に交わした言葉も覚えていません。後悔と自分を責める想い。この経験が、私にとって活動の原点となりました。

 2010年12月、私は自殺で親を亡くした仲間と一緒に『自殺って言えなかった。』という作文集を読みました。当時から約10年前、自殺で親を亡くした先輩が社会的にタブーとされていた自殺という課題に挑み、後に自殺対策基本法の成立や対策が前へ進む一つのきっかけとなった本です。『私は父親を自殺で亡くし、今でも後悔しています。何であの時に私が優しくできなかったんだろう。』そこに書かれていた言葉たちは、私も抱えていた紛れもない"心の叫び"でした。先輩が勇気を出して声をあげてくれたから、今の自分があるのかもしれない。自分たちに何ができるかは分からないけど、自分たちが受け取ったバトンを次へつなげる番じゃないか。そう思い立ち、私たちは活動を始めることにしました。

 まずは自殺で親を亡くした仲間だけでなく、大学の友達や自殺対策の講演会で知り合った大人にも声をかけて集まりました。そこで、ご縁があって2011年3月の自殺対策強化月間に私たちが主体となって活動できる機会をいただきました。具体的にどのような活動をしようか、そう話し合っていた時に『村尾くんは、当時の体験から何かない?』と聞かれて浮かび上がったこと。それが、冒頭に述べた母親と写真を撮れずに後悔していることでした。

 「私は、大切な人と写真を撮ることができなかった。だからこそ、今を生きる人たちには写真を撮ることを通じて人とのつながりや自殺という課題について少しでも考える機会をつくれないだろうか。」

 このようにして『大切な人との写真パネル展』は動き始めました。『誰かにとって大切な人が追いつめられた末に自殺で亡くなっていることを知ってほしい。だから、北海道の一年間で自殺によって亡くなる人の数と同じだけの写真を集めて、そのことを感じてほしい。』メンバーの想いから、募集枚数は1533枚を目標にしました。『家族とかだけじゃなくて、友達とか恋人との写真も集めよう。その人が誰か大切な人と生きていることや、その人も誰かにとって大切な人で、大切な人が身近にいること・自分もそうなんだということを知ってほしい。』メンバーの想いから、写真は幅広い人たちから集めることにしました。『せっかく写真を撮るなら、色あせない大切な思い出として残してほしい。だから、パネル展が終わったら写真パネルをその人のもとへ返そう。』メンバーの想いから、集めた写真のパネルは展示終了後に返送することにしました。この活動は私の経験がきっかけだったけど、メンバーの一人ひとりが想いを重ね合わせて一つの企画となっていきました。

 この活動をきっかけに設立された団体が『こころから笑い合うためのネットワーク・ここわらねっと』です。小さな市民活動グループですが、現在も北海道を中心に『生きていく支援』としての自殺対策や子どもの貧困対策などの活動を展開しています。この『生きていく支援』は、大切な人との写真パネル展時からの合言葉です。

 「自殺対策は生きていく支援で、生きていくことは誰もが当事者です。」

 自殺という課題やその対策は、追い詰められている人や自殺で大切な人を亡くした遺族、遺児だけが当事者なんかじゃない。自殺対策は、その人が『死ななければいい』というものではなく、その人の『生きていく』という視点に立つことが必要なんだ。『生きていく』という視点に立ったとき、自殺対策は今を生きるみんなが当事者になる。

 この想いは、私にとっても『死んだ母親』ではなく『生きてきた母親』に焦点が当たるきっかけとなりました。そして、私の母親や自殺で亡くなった人の死んだ証ではなく、母親や亡くなった人の生きた証を残し、生きてきた灯(あかし)をともし続けたい。そう強く思いながら、私たちは社会に向けて一歩を踏み出しました。

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 仕事の所用で2011年5月に報道されたNHK北海道クローズアップ『あなたの"大切な人"と』を久しぶりに観ました。来年2016年3月で大切な人との写真パネル展から5年が経過します。あの時の私や仲間の若者たちは社会へ何を発信したかったのか。じっくり振り返りたいと思います。また、当時の様子を取材していただいたものが残っていましたので、よろしければご覧ください。

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