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村尾政樹のブログ『伝える。』

ソーシャルセクターに勤める26歳の個人ブログ。仕事や活動の記録がメインです。

Vol.58 温かいおせっかいで子供救う 貧困対策センター「あすのば」

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左から)子供の貧困対策センター「あすのば」事務局長の村尾政樹さん、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる、代表理事の小河光治さん(tobojiさん撮影、撮影協力:Turandot臥龍居)

2015.8.26 16:06

 経済的格差が広がり、日本でも子供の貧困が問題視されている。2014年には「子どもの貧困対策法」が施行されたが、子供たちが困窮しているその実態はあまり知られていない。6月に立ち上げられた子供の貧困対策センター「あすのば」代表理事の小河光治さんと事務局長の村尾政樹さんに話を聞いた。

知られていない実態

 「海外には、日本ではあり得ないような貧困の子供たちがいます」。途上国の子供たちを救うための募金活動をする若い日本人ボランティアのスピーチに私は耳を疑った。日本にも一日の食事が学校の給食だけという子供がいるし、子供の6人に1人が貧困状態にあるとされている。だが、そう聞かされてもピンとこないのだろう。実感がもてないのは、子供自身が声を上げることは難しく、大人も子供も自分の家庭環境を明かしたくないという気持ちがあり、表に出にくいからなのかもしれない。

 20年以上前、ボランティアでかかわった骨髄バンクの活動を通じ、白血病で父親を亡くし進学を諦める子供がいることを知った。親を亡くした子供や親が働けない家庭の子供を支援する「あしなが育英会」で働いていた小河さんと出会い、貧困に直面する子供たちの現実を教えてもらった。

 先進国の影。日本ではあの頃よりも低賃金の非正規雇用の親が増えた。一人親世帯の貧困率OECD加盟国の中で最も高く、現状は悪化する一方だ。

 そこで小河さんは、あらゆる貧困の子供たちを救済するため「あすのば」を立ち上げた。「子供の貧困という言葉は知られてきたが、アフリカなどの飢餓で明日死んじゃうかも…という絶対的な貧困と違い、日本の貧困は見えにくい。戦後はもっと物がなかった。それに比べたら今は…などというジェネレーションギャップもある」と指摘する。

 身近に貧困に苦しむ子供がいるという実態を知らせていくために、小河さんは「見える化が大事」と考え、調査を行おうとしている。たとえば、あしなが育英会の調査では、高卒後の進路について「就職する」と答えた子供が3割で、その理由を「お金がないから」とした子供が3分の1以上もいた。バイトをして学費を稼いでいる子供も多いという。

 「子供はみんなの宝」「夢を持とう」「目標に向かって努力を」など言葉にするのはたやすいが、生まれた環境で子供の将来が左右されている。経済的格差が教育の格差につながり、経済的格差をさらに広げている。もはや家庭、個人の問題ではなく、国の姿勢が問われる問題だ。「調査により可視化することで、どんな政策を打てば限られたお金を有効に使えるのか、道しるべを示すことができる」と小河さんは言う。

「経済」と「心」の支えに

 「子供がセンター」を合言葉にしている「あすのば」では、児童養護施設出身者、母子家庭育ちといった当事者が中心になって活動している。「大変な状況は子供たちが一番よく知っている。だからまず子供たちの声を聞くことが大切」と小河さんは考えている。

 中心メンバーの一人で、事務局長を務める村尾さんは25歳。小学6年生の時に母親を自殺で亡くし、あしなが育英会奨学金を受け北海道大学を卒業した。

 「自分は貧乏だけど貧困じゃないという子もいる。貧乏に困りごとが付随し貧困になるのだと思う」と村尾さんは実感している。

 「『貧』だけを経済的に援助すればよいというものではないし、『困』だけ見ていてもいけない。何よりも彼らの自尊心を大切にしながら、誰もがよりよく暮らすにはどうすればいいのかという視点で考えていきたい」

 シャイで静かな印象な村尾さんだが、ひとたび話し始めると、優しい瞳が光を増し頼りになる“あんちゃん”といった感じだ。実際に、村尾さんのような当事者が活動することで、子供たちを勇気づけていると小河さんは確信している。「自分なんてどうせダメ。バカだし、お金もないしと思っていた子供たちが、先輩たちの活躍を知り勇気を得ていく。その効果が大きい」

 救ってもらった子供が大人になり、救われていない子供を救う。この連鎖が素晴らしい。当事者たちの活動だからこその突破力、説得力がある。しかし、社会だってもっと進化できるはずと希望を持ちたい。

 「子供の支援にはいろんな方法がある。おせっかいおばさんの一緒にご飯を食べようという発想から始まった子供食堂、学習支援、制服のリサイクル…。それぞれにできることもたくさんある」と小河さん。人知れず苦しむ子供をみんなが温かくおせっかいをする。貧困の連鎖をみんなで断ち切ることができてこそ、「子供はみんなの宝」と言っていい。

(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/撮影:フォトグラファー toboji/撮影協力:Turandot臥龍居/SANKEI EXPRESS

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