村尾政樹の個人ブログ

ソーシャルセクターに勤める29歳の個人ブログ。仕事や活動の記録がメインです。

「子どもの貧困対策計画」レポートNo.1-2<北海道・基本的方向性と重点施策編>

    本日は『「子どもの貧困対策計画」レポート No.1-1<北海道・現状と課題編> 』の続編です。

―人口減少や厳しい経済・雇用など多くの問題を抱える北海道。対策は、地域の担い手を育み活力ある北海道を創造するためにも重要。目標値設定も盛り込まれる!

 正直、まだ計画が素案であることと国レベルでの対策・予算付けがどうなるかという状況がゆえに他の法律や既存の施策の”焼き増し”をせざるを得ない、計画を策定する人の苦労を全体的に感じました。

 そのような中でも、北海道は現状と課題を踏まえ、計画のめざす姿として「全ての子どもたちがそれぞれ前向きに人生を歩むとともに、将来、地域の担い手となり、その一人ひとりの活躍を結集し活力ある北海道を創造することが重要」と述べています。人口減少や厳しい経済・雇用など多くの問題を抱える北海道や「地方」だからこそ、子どもの貧困対策の重要性はより広く・深く共有されるべきなのでしょう。

 また、北海道は国の大綱にも掲げられた「①教育支援」「②生活支援」「③保護者に対する就労支援」「④経済的支援」を基本的な対応方向としています。その各項目のイメージや重要な理由は以下の図にまとめました。「①を②が支え、②を③や④が支える」ようなイメージです。ここで評価すべき点は、単に大綱の4本柱を並べて列記するのではなく、もしくは対策の動向から大小を決めるのではなく、各項目に重要な理由を明確に述べている点です。

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 そして、子どもの貧困に関する指標については、実施状況や対策の効果等を検証・評価するため指標を設定することとしています。なお、北海道は各指標に現状値を踏まえた目標値を設定すると述べています。この「目標値」は法律や大綱で盛り込まれなかったものであり、大きく評価されるべきことです。指標項目及び目標値について、素案では公表されておらず検討中となっています(9月21日未明現在)。

ー基本的方向性に沿った9つの中項目と36の小項目を重点施策として掲げ、ライフ・ステージに応じた切れ目のない施策の実施を計画

 北海道は前述した4つの基本的方向性に沿って9つの中項目と36の小項目を重点施策として掲げました。中項目については、教育支援で「学校における総合的な教育支援」「幼児教育・保育における教育支援」「就学支援の充実」「大学進学等の教育機会の提供」「その他の教育支援」といった5項目、生活支援で「保護者の生活支援」「子どもの生活支援」「子どもの就労支援」「その他の生活支援」といった4項目があります。36の小項目およびライフ・ステージに応じた切れ目のない施策の実施については素案の14ページをそのまま掲載します。

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 具体的な施策としては国の大綱や生活困窮者自立支援法、子ども・子育て支援法に基づいた支援の充実、放課後子供教室やコミュニティ・スクールなどの既存事業の推進・拡充も目立ちました。これらはある意味で限られた財源の中で「今あるものを有効活用する=税金を無駄に使わない」という捉え方もできます。しかし、やはり「地方型の対策モデル」を模索するには北海道独自の施策も検討していく必要性があります。

 もちろん、国レベルでやるべきこと、地方自治体レベルでできることは見極めなければいけません。できることは限られているとしても、北海道が今回どれだけ対策の計画を独自に勇断し策定するかが対策に対する本気度と子どもやひとり親などに対して「見捨てていない」ことを伝える大きな希望につながります。そのような意味で、パブリックコメントや引き続きの検討を受けて各項目の質的な充実は今後も期待したいと思います。

ー子どもの生活支援における「自立支援基金」の創設や「社会資源の地域間格差の解消」など、北海道が切り拓く可能性を秘めた計画も。そして、道産子よ、大志を抱くことのできない要因は何なのか。

 その中でも、生活支援では児童養護施設を退所する子どもへの「自立支援基金」創設を国に要望することと基金なども含めた支援のあり方を検討すると述べています。これは北海道独自か全国的にも珍しい計画で、経済的支援に踏み込んだ内容は高く評価するべきと思います。

    また、地方は人口や地理的要因から支える人材が不足していること、進路や就職などの選択肢が限られていることなどから「社会資源の地域間格差の解消」が掲げられているのは、北海道の支援者・支援団体の人と私が一緒に訴えてきた項目の一つです。素案では「検討する」にとどまっていますが、この項目が解決できるような対策が講じられるとき「地方型対策モデル」の大きな前進になると私は思っています。その「検討」も含めて「社会資源の地域間格差の解消」は今回の計画で注目すべき一つの点でしょう。

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 以上、2回に渡って北海道の対策計画(素案)についてレポートしてまいりました。策定を進める担当者には心からの敬意を表するとともに、一つだけ正直に申し上げたいと思います。

    現状と課題において独自に実態を掴もうとしてくださったことを感じていますが、まだ実態の把握は十分でないと思っています。子どもの貧困の実態が見えづらいからこそ、現時点で比較的「見えやすい子ども」にスポットが当たるのは仕方のないことかもしれません。しかし、対策を必要としている子どもは他にも多くいて、その「見えづらい子ども」こそ光が当たる対策になってほしいと願っています。

 そのためには、例えば少なくとも振興局単位で実態がどのようなものなのか、欲を言えば市町村単位で実態がどのようなものなのか掴むことが第一歩です。京都府の計画には「実態把握の調査研究」が盛り込まれていますし、東京都の足立区のように市区町村単位でも実態調査を進めようとしている自治体もあります。つまり、現実的に無理なことではないはず。道産子よ、大志を抱くことのできない要因は何なのか。計画策定までに盛り込まれることを大きく期待します。

 (このレポートは、あくまで私個人の見解もあるため、興味が出た人は下記URLから現物をお読みいただくことをおすすめします。10月9日(金)まで素案に対するパブリックコメントも募集しています。ぜひ、北海道在住の人はご意見を応募してみてください。)

 

【参考ページ・参考資料】

北海道子どもの貧困対策推進計画(素案)に係る道民意見の募集について【10月9日(金)まで】

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kms/kodomonohinnkonn.htm

・北海道子どもの貧困対策推進計画(素案) 

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kms/js/hinkonsoan.pdf