村尾政樹のブログ『伝える。』

ソーシャルセクターに勤める27歳の個人ブログ。仕事や活動の記録がメインです。

「見捨てられていないよ」子供たちに伝えたい

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 北海道新聞2015年7月12日(日曜日)札幌圏

はなし 抄 「見捨てられていないよ」子供たちに伝えたい

子どもの貧困対策センター設立呼びかけ人 村尾 政樹さん

(6月14日、札幌市中央区の講演会より)

 

 私は小学校6年生の時に母を自殺で亡くしました。親を病気などで亡くした遺児を支援する「あしなが育英会」の奨学金などで北大教育学部に進学しました。

 あしなが育英会は夏休みに、遺児たちが交流するキャンプを各地で開いています。遺児高校生のキャンプは3泊4日で、親との死別体験を話したり、自分の進路、将来について考えます。大学生がリーダーとしてキャンプを支え、私も大学生だった2011年に学生代表を務めました。

 キャンプではさまざまなプログラムを通じ、彼らに「チャレンジしよう」「前向きに生きていこう」というメッセージを伝えました。彼らも「進学するつもりはなかったけど、頑張ってみようと思う」「夢を持とうと思った」と言ってくれました。でも、キャンプを終えて、高校生たちに対して本当に申し訳ない気持ちがこみ上げてきたのです。

 遺児の多くはひとり親家庭です。09年に経済協力開発機構OECD)が公表した日本の子供の貧困率(06年)は14.2%で、ひとり親家庭では54.3%にのぼります。彼らがキャンプを通じて夢や希望をかなえようと思ったとしても、それで経済的に苦しい状況が変わるわけではない。背負っているものを私が肩代わりすることもできない。それなのに僕は、「頑張って夢を持つのはいいことだよ。楽しく生きよう」と言っている。本当に無責任だと思いました。夢や希望で現状を変えることはできない、彼らが自分の人生を切り開いていけるだけの環境をつくらなくてはいけないと強く思いました。

 あれから4年がたち、高校生たちは今19、20歳です。昨年、札幌で子供の貧困対策を求める集会があり、彼らは当事者として対策の必要性を訴えました。もう大人になり、「子供の貧困を何とかしよう」というバトンを引き継いでくれている。うれしい半面、非常に複雑な気持ちになりました。彼らが高校生のころから状況は大きくは変わっていないからです。

 OECDのデータなどがきっかけになり、子供の貧困が社会的に少しずつ認知されるようになりました。13年に子供の貧困対策推進法が成立し、昨年8月には、国の対策方針をまとめた大綱が閣議決定されました。現在は都道府県レベルでの具体的な対策計画の策定が始まっている段階です。

 貧困対策の課題は、地域の貧困実態が非常に見えづらいことです。実態が把握できなければ、自治体も実効性ある計画を作れません。最近は学習支援や、首都圏では子供に手作りの食事を提供する「子ども食堂」と呼ばれる活動も増えてきましたが、こうした活動のネットワーク化や連携も必要です。子供たちに必要な支援が届きにくいという実態もあります。

 こうした課題を解決するため、「子どもの貧困対策センター あすのば」(東京)が6月に設立され、私も職員として運営に携わります。活動の柱は貧困の実態調査と支援団体のネットワーク化、子供に支援が行き届く仕組みづくりです。政府や関係機関に対して中立的な立場を守り、あくまでも子供たちのために活動したいと思っています。センターの設立発表から1カ月で934万円もの寄付が集まりました。多くの人に支えられてセンターができたこと、見捨てられていないよ、ということを今後の活動で子供たちにしっかり伝えていきたい。

 貧困対策は単に「かわいそうな子」を救うためではなく、子供も大人もみんなが笑顔で過ごすために必要な対策だと思います。未来への投資という視点で、関心を持ち続けてほしいと思います。(構成・古川有子)

 

むらお・まさき 90年神戸市生まれ。09年、北大入学。10年、親を亡くした若者らによる「こころから笑い合うためのネットワーク・ここわらねっと」を設立し、自殺対策や貧困対策などを発信。「子どもの貧困対策センター」の設立呼びかけ人で、設立後は専従職員。24歳。東京都在住。