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(私の視点)子どもの貧困 行政の対策、鈍らせないで 朝日新聞2016年2月19日掲載

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(私の視点)子どもの貧困 行政の対策、鈍らせないで 村尾政樹

2016年2月19日05時00分

 

 子どもの貧困の問題を解決するため、2013年6月に成立した「子どもの貧困対策法」は、親を亡くした遺児たちにとっても悲願だった。成立を呼びかけ続けたこの対策法によって、遺児たちへのさらなる支援の充実はもちろん、より多くの子どもたちに光が当たることになった。

 翌年8月には基本方針を定める国の大綱が閣議決定され、地方自治体においても具体的な計画の策定が始まっている。民間で子どもを支える取り組みも増えてきた。

 だがここにきて、雲行きが怪しくなっている。国が旗を振る対策の一つに民間の支援団体などに助成をする「子供の未来応援基金」があるが、億単位の資金が必要にもかかわらず、1月末時点で寄付が約1600万円と伸び悩んでいる。

 地方自治体における計画の策定も、47都道府県のうち4割は子どもの貧困対策単独の計画としては策定を予定しておらず、地域によって状況が分かれつつあることが、日本大学と「あすのば」の昨年11月の調査で明らかになった。

 必要な対策は、ほかにもある。今は高校卒業までとなっている児童扶養手当の年齢制限は、十分な進路選択の機会を確保するために20歳まで延長すべきだし、乳幼児期に対する支援や、親の労働環境の改善などでも課題が残る。今月下旬には超党派で構成する議員連盟が発足する。対策の強化に向け、さらに政府は積極的に動いてほしい。

 また、対策の推進にあたっては、子どもの貧困の実態を綿密に把握することも必要だ。経済的に苦しんできたある学生は「極端に困窮している家庭の子どもだけが、貧困だと思われている」と話す。実態が分からなければ、対応も印象による短絡的なものになりがちで、現実に即した対策は打てなくなる。沖縄県が29・9%という県内の子どもの貧困率を公表したように、地域ごとの実態を把握する動きも必要だ。

 対策法が成立した時、ある遺児学生は「一人でも多くの子どもたちに光が当たるよう、バトンをつないでいきたい」と話していた。

 あれから2年半。私たちは、そのバトンをここで止めるわけにはいかない。私たち一人ひとりの本気度が、いま試されている。

 (むらおまさき 子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」事務局長)

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